エクスプローラーズクラブの冒険

エクスプローラーズクラブでの冒険について、当事者たちが綴るブログです。

首が傾いている男

カワムラはいそがしい。打ち上げの日が近づくも、まだまだやらなければならない作業が山盛りだったのだ。

航空法に抵触しないこと」
「管制局への申請と承認を得ること」

航空法に抵触しないとは、電波の問題である。飛行機に乗ったときに機内モードにするように、iPhoneなどの電波は使用してはいけないのである。ということは、打ち上げ後、機体がどこを飛んでいるのかを知るためにはGPSに頼って位置情報を得たいのだが、iPhoneを使用することはできない。なんらかの方法で機体の場所を特定できなければ、まず回収は無理である。

どうするか????

そこでまた、違う特殊技能の持ち主が現れる。無線をクレイジーに研究しているマニアがメンバーにいた。彼の構想では打ち上げる機体に無線機を積み、それが発する電波を解析して機体の位置を割り出そうというものだ。しかし、これもパーフェクトではない。地上から飛行機が飛ぶくらいの高度までしか電波を拾うことができない。

通常打ち上げから回収まで2時間〜3時間程度。地上から雲を越えて宇宙に到達して、その逆をたどり地上に戻ってくる。雲より上空は無線電波を拾うことができない。なので、帰還時電波を拾える高度には限界がある。時間は数分しかない。その間に適切な場所に移動し電波から位置情報を割り出し、目視で確かめ、キャッチしなければならないのである。まったくもってして未知数な世界である。そんな状況に無線クレイジーマニアは腕が鳴る。

彼はいつも首がすこし傾いているのだが、このときはさらに首を傾けて、このミッションに取り掛かる。すごいことを、すごくないように説明して実行してしまう天才である。そのあとしばらく経ってから「あれ、すごいことなんだけどな・・」とつぶやく。メンバーはそんな彼のことが大好きだった。かつて、クック海峡に手を挙げた男である。

彼は、見たことのないような電波キャッチ用のアンテナを密かに開発していた。

そしてそれらのシステムは地上での通信においては問題がないことを確認した。そこまで密かにやるのがクレイジー流だ。

カワムラに残る課題はあとひとつ。管制局への届け出だ。これも結構ハードルが高かった。考えれば分かることだが、風船ロケットを打ち上げる。その時にもし飛行機が通過して接触しようものなら大事故だ。例え風船であってもトンデモナイ(飛んでいるが)ことになる。

そのためには、いつ、どこを、どのような状態、で物体が飛行するかを明確にして申請しなければならない。

理屈はそうであるが、実際には天候により打ち上げ場所や時間の変更は充分に有り得る。ましてや風に流されるので、当日その状況にならないと正確な飛行ルートは分からないのである。

「ザ・ネゴシエーター」の異名を持つメンバーは、何度も何度もシミュレートし、その交渉にあたる。ある日、ケロットした表情で「楽勝だった」と言って、各局からの承認をすべて得てきた。さすがのネゴシエーターである。

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