エクスプローラーズクラブの冒険

エクスプローラーズクラブでの冒険について、当事者たちが綴るブログです。

捨てた名前

「ミヤマエさん、ヨットは初めてですか?」

『Monte-Carlo』号に乗り込んだ俺に部長は声をかけてきた。 ミヤマエさん。今は違う名前で生きている俺にとっては、懐かしい名前だ。TOSHI TONICという現在の名前で生きるようにした話は、またいずれ語ろうと思うけど、当時はそう呼ばれていた。

夏の青い空で初めて乗ったMonte-Carlo。予想していたより船は揺れて最初は落ち着かなかった。

「あとでセール張ったりするのを手伝って下さいね!」
「はい、分かりました」

セールという意味もあまり分からず、この揺れるヨットで何かするのか。と一瞬思ったが、そんなことよりも俺は、新しいことをやることにワクワクしていた。

よく考えてみると、最近新しいことをあまりやらなくなっていた。

新しい仕事や新しい取引先などはあったけれど、それは新しいとは言わず、今までやっていたことが拡大したり、配置が変わったぐらいなもので、まったく新しいことなんて無かった。

そんな毎日に飽き飽きしていた。
そんな人生に飽き飽きしていた。

そんなことを考えながら、Monte-Carlo号は出発した。 部長は俺たちを率いてヨットの船首に立っていた。揺れるヨットの船首によく立っているな、と思った。 俺は船上の椅子に座って出発した。まだその時はお客さんだった。人生のお客さんだった。

部長は、揺れる船首でみんなの前に立っている。

「それじゃあ、出発しますよー。みんな愉しんでくださいね!」

この人の声は、不思議な安心感と期待感がある。

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