エクスプローラーズクラブの冒険

エクスプローラーズクラブでの冒険について、当事者たちが綴るブログです。

渡米前のこと

Monte-Carlo号は夢の島マリーナを出港した。

ティラーを操作していたのは、ツガルだった。ティラーとは車のハンドルみたいなもので、ツガルがヨットを操作していた。

「トシ、ヨット気持ちええやろ?」ツガルはそう語りかけてきた。

実はツガルとは、このイベントの前に、クラブに入会して初めて会って、一緒に飲んだ人だ。 品川駅の近くのレストランバーで2人は会った。 俺よりも背が高い人は珍しい。そして、俺が昔勤めていた会社に、ツガルも以前勤めていた。

今は、ツガルは経営者。俺は俳優。

どんな話をしていたかを詳しくは覚えていないが、当時はなんかグチグチと俺は話をしていた気がする。

ツガルは、それまで俺がもっていた社長のイメージをぶち壊した。当時は何を言ってるのかが、訳が分からなかった。ただ、俺とは違う生き方をしてる人だと思った。こんな面白い人がいるクラブは面白いに違いないと思い、すぐにイベントに参加することにした。

「とにかく、ヨットに乗るといいよ!」と何度も言われた。

過去を捨てて、未来を生きることにするまでにその壁にぶつかり先に進めない時期が、暫くあった。

その時期に何度もツガルと飲んだ。というよりか、ツガルのいる場所と時間を探してくっついていったという感じだ。今の自分を変えたくて話を聞き、ダメ出しをされながらくっついていった。俺はトレーニングが大好きだったが、今度は自分の中身のトレーニングを重ねた。

ロサンゼルスに旅立つ前に2人でまた飲んだ。いい夜だった。その頃には、ツガルが言ってることが分かるようになっていた。

今は話さなくても分かる。答えはヨットにある。

だから、ツガルは俺にヨットをずっと勧めたのだ。半年後、俺はこのヨットに住むことになる。

 

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エクスプローラーズクラブ『オーシャンズセブン』

(前回)捨てた名前 <-> (次回)異国での船さがし
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モロコシ畑でつかまえて

そして、捜索ポイントふたつめ。

打ち上げポイントから500メートルほど離れた場所である。打ち上げ後、すぐに落ちたとは考えづらかったが、500メートル離れた地点なら考えられなくもない。

しかし、そのポイントは身の丈以上の草むらの中心地だ。とうもろこしだったか記憶は怪しいが、とにかく高さが2メートル以上あり、それらを両手でかき分けて一歩一歩進む感じだ。映画『フィールド・オブ・ドリームス』の外野向こうの世界。目の前には草しかなく、手前に何かがあっても見えない。

そこを我らがボスとプロポーズをする予定の男二人が突入した。我々自身がすでに忘れかけていたが、そのプロジェクトはもともと「彼女にプロポーズする」ことも目的であった

三歩くらい進むと姿は見えず、もう声しか聞こえない。

「ありそう?」
「ない」

「ありそう?」
「ない」

「ありそう?」
「ない」

このやり取りを繰り返しながら、数分後エライ勢いでこちらへ出てきた。

「えっ!APOLLO29が見つかったのか?」と、その様子に一抹の残念感を感じた。見つけたい気持ちはあるものの、あまりに早くに見つかるということは打ち上げ失敗を意味する。それなのにモロコシ畑に突っ込む我々。人はときに、こんな行動をとるのだろう。複雑なオトメ心というものである。実際には、男ばかりだったが。

しかし、出てくる姿があきらかにおかしい。エラク急いでいるのだ。なにかと思えば蜂の巣があったらしい。かき分けかき分け入っていくものだから、蜂の巣の存在に気づかずヒットしたようで、もう少しで大群に襲われるところだった。

そんなことでこの場所からは引き返したが、この辺りにAPOLLO29はないことは感覚で分かった。

もう一度無線電波から位置を割り出そうと試みた。無線機から送られてくるデータが統一性があれば現在地が特定できるのだが、バラバラである。

とにかく、可能性のありそうな草原を、びしょびしょに濡れて靴擦れをおこしながら探し回った。

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(前回)始動した回収班 <-> つづく

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始動した回収班

『APOLLO29』は勢いよく上空へと舞いたった。

若干の風に流されながらもドンドン上空へ。2m50cmの風船がみるみる間に小さくなっていく。時間にして一分くらいだろうか、雨が止んだとはいえ雲は低空に位置し、その雲の中に、手品のようにAPOLLO29は消えていった。

このとき、若干の嬉しさと大きな期待、不安を皆が抱えた。

もう我々はAPOLLO29をコントロールすることはできない。APOLLO29に委ねるしかない。祈るような気持ちだった。我々は2つのグループに別れていた。一つは打ち上げ班、もう一つは回収班である。予定飛行時間は2〜3時間。

上空ではジェット気流で流される。極秘シュミレーターにより回収地点は、数十キロ離れた場所になることが想定された。回収班は予め回収地点に移動をしておかないと降りきたAPOLLO29をキャッチできない。そのため、回収班は先発隊として既に回収予想地点へ向け出発をしていた。

打ち上げ班と回収班のやり取りは、Facebookメッセンジャーを使ってリアルタイムで行われていた。APOLLO29が打ち上げられた事実は、すぐさま回収班に伝えられた。回収班は位置情報解析装置(無線電波を受信するためのアンテナとPCだけだが)で、位置の特定にあたった。

解析結果によると、数箇所の位置情報が打ち上げ班に返されてきた。

???

先ず一箇所目。ほぼ打ち上げ場所。打ち上げた場所から半径50m以内で、詳細をたどると打ち上げポイント横の建物を指している。ということは、打ち上げ後すぐに風船は破裂し落ちてきたのか?それとも打ち上げ時のデータが残っているだけなのか?

ちなみに無線のシステムは、一分間に数回(回数は忘れた)にわけて、定期的に通信する設定になっている。その通信電波には発信位置情報が含まれているので、その情報から居場所を特定するという仕組みである。

我々は打ち上げ後、POLLO29の行方を目視で確認をしている。近くに落ちたとは考えにくい。しかし、その可能性もゼロではない。「屋根に落ちたのか??」と解析ポイントや周辺をくまなく探しまくった。いくら探してもない。こんなに早く落下したのなら、落ちた時の衝撃音や何か手がかりがあるはずだが、何も見当たらなかった。

見つからない=ちゃんと飛行している

という期待感と焦燥感を、行き来していた。

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(前回)4時、打ち上げ <-> (次回)モロコシ畑でつかまえて

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4時、打ち上げ

深夜2時頃だっただろうか。周辺は真っ暗な中、道路に設置されている電光掲示板だけが光っていた。

数時間のドライブ後、打ち上げ予定地点に我々はそこにいた。そこには警報が表示されている。たしか大雨防風警報だったように記憶している。一般的に考えると最悪のコンディションである。が、我々は「試練がやってきたー!」と喜ぶのである。やはりオカシナな集団だ(笑)

身に降りかかる問題や障害を喜ぶのである。

とはいっても現実問題、風船ロケットは風が強すぎては失敗に終わる。ならば天候を変えるしかない。2時間後、早朝4時が打ち上げ予定時刻だ。「この2時間で天候を変えよう!」と皆、強く強く願った。

手分けして打ち上げ準備に取り掛かる。

電子機器の動作確認をしようとした所、変態から大きな声があがった。「問題発生しました!」撮影用のカメラを充電していたにも関わらずバッテリーがなくなっていた。移動中何かの加減で電気を消費していたのだろう。しかし慌てることなく、そんなこともあろうかと予備バッテリーへの切り替え対応する。様々なケースを想定し準備をしてきたので直ぐさま対応できたが、内心は宇宙という未知な空間である。準備をしてきたとは言え一抹の不安を抱えた。予備バッテリーからの電源供給が飛行中持つのかどうか。そして、すべての電子機器の動作確認をすませ密閉作業に移る。

その頃、車外では風船を膨らます作業も同時に行われていた。2m50cmに膨らます。当たり前だが、今までやったことがない。ワクワクしながら膨らます。子供がはしゃいでるようだ。だが、準備してきたガスが足りるのか?計算上は大丈夫なはずだが、あまりの風船の大きさに充填途中不安になる。まだ夜が明けていない暗闇の中、大の大人が巨大な風船を膨らますのである。何も知らない人からみると奇怪な光景で怪しい極まりないのである。もちろん誰もいるはずがない早朝だったが。

30分ほど費やしただろうか、ちゃんと規定の大きさに膨らますことができた。

その時、雨はかなり小降りになっていた。

昔、風船おじさんというのがニュースで流れたが、まさに人間ひとりなら飛んでいきそうな浮力だった。(言い過ぎた・・)

機体をパラシュートと風船につなぎ準備完了。『APOLLO29』の完成だ!時刻は3時45分くらいだったと思う。予定通りのクルーワークだった。みんな初めての作業というのに、何回も経験をしたことのある手早さだった。お伝えするのを忘れていたが、我々の風船ロケットは『APOLLO29』と名付けられた。

早朝4時。そのときの風の方向を読み、電線や障害物など干渉しない場所へ風船ロケットを握りしめ徒歩にて100mほど移動した。プロジェクトリーダーと製作者変態の二人で風船ロケットを握っていたが、その時の感触というか感覚というか鮮明に覚えている。いよいよだ!という心臓ドキドキ、果てしないロマンへの期待、失敗は考えたくないが保証がある訳ではない。不安も心の片隅にあった。

だがその不安もよそに風船ロケットは「俺は宇宙に行くんだ!」と言わんばかりに、その強い浮力から飛びたがっている意志を感じた。

打ち上げポイントをボスが決める。

「ここだ!!!」

この頃には雨も風も止んでいた。我々は、想いの総力で天候も変えた。いよいよ!打ち上げカウントダウンを始める。

10、9,8,7,6,5,4・・・・

3・・・

2・・

風船ロケットは、放たれた。

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前回(ガソリン満タン10万円、ガソリン満タン1億円) <->  次回(始動した回収班

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捨てた名前

「ミヤマエさん、ヨットは初めてですか?」

『Monte-Carlo』号に乗り込んだ俺に部長は声をかけてきた。 ミヤマエさん。今は違う名前で生きている俺にとっては、懐かしい名前だ。TOSHI TONICという現在の名前で生きるようにした話は、またいずれ語ろうと思うけど、当時はそう呼ばれていた。

夏の青い空で初めて乗ったMonte-Carlo。予想していたより船は揺れて最初は落ち着かなかった。

「あとでセール張ったりするのを手伝って下さいね!」
「はい、分かりました」

セールという意味もあまり分からず、この揺れるヨットで何かするのか。と一瞬思ったが、そんなことよりも俺は、新しいことをやることにワクワクしていた。

よく考えてみると、最近新しいことをあまりやらなくなっていた。

新しい仕事や新しい取引先などはあったけれど、それは新しいとは言わず、今までやっていたことが拡大したり、配置が変わったぐらいなもので、まったく新しいことなんて無かった。

そんな毎日に飽き飽きしていた。
そんな人生に飽き飽きしていた。

そんなことを考えながら、Monte-Carlo号は出発した。 部長は俺たちを率いてヨットの船首に立っていた。揺れるヨットの船首によく立っているな、と思った。 俺は船上の椅子に座って出発した。まだその時はお客さんだった。人生のお客さんだった。

部長は、揺れる船首でみんなの前に立っている。

「それじゃあ、出発しますよー。みんな愉しんでくださいね!」

この人の声は、不思議な安心感と期待感がある。

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ガソリン満タン10万円、ガソリン満タン1億円

カワムラは京都から新幹線に乗った

このチームメンバーは日本全国に点在している。風船ロケットを打ち上げる場所は北海道と決まり、東京で集合してみんなで北海道に向かうことにした。普通なら移動手段は飛行機と車を乗り継いでと思われるだろうが、これまたすごい。

エクスプローラーズクラブで所有している巨大なキャンピングカーでの移動である。

キャンピングカーといっても、想像をはるかに超える大きさで、大型観光バスと同じくらいの巨大キャンピングカーである。わかりやすく説明するためにキャンピングカーと書いたが、実際にはモーターホームと呼ばれている。動く家だ。そしてこのモーターホームのことを我々は『ジェームズ』と呼んで仲間の一員として大切にしている。

ここでまた話は逸れる。

というのは、我々は一つのこと(今回でいええば宇宙へ風船ロケットを打ち上げること。というか、もともとプロポーズじゃなかったっけ?)だけを効率よく実行するのなら、飛行機で移動すれば良いワケだが、それをしても面白みがないので、どうせやるならとことん遊ぼう!というのが我々エクスプローラーズクラブのスタンスである。

したがって当然のごとく、巨大モーターホームを走らせての東京から北海道への移動となるワケだ。

このモーターホーム、凄いのは停車時に室内が横方向に拡張できるのだ。スイッチを押すことによって自動でリビングの箱が横にスライドして室内空間が倍ほどに拡がる。内装はクラブメンバーの手入れにより赤いベルベット調の壁紙が貼られており、ソファーもある。とても素敵な寝室もあり、クラブハウスが移動しているようなものだ。

ちなみにガソリンを満タンにすると、支払いは一回で10万円を超える。

彼はガソリン食いのモンスターだ。征く先々では、その大きさと異常に迫力のある出で立ちから必ず注目の的となる。我々が降りていく瞬間、周囲の注目を集める。ガソリンスタンドのアルバイトの若者が目を輝かせて歓待してくれる。なんともいい気分だ。写真?いいよ、撮りたければ撮って。

そのジェームズに東京からボスを含め10名ほどが乗り込み、北海道を目指した。ボスはモナコで、ガソリン満タン1億円のスーパーヨットをよく眺めている

 

前回(風呂敷につつんだ風船)<->  次回(4時、打ち上げ)

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風呂敷につつんだ風船

首をかしげながら数々の問題をクリアし、風船ロケットは完成した。

カメラやデジタルフォトフレームなど極寒で耐えられる仕様の電子機器と無線機。草むらの中など目視で見付けられないときのためのアラーム、降下時に開くパラシュート、予備バッテリーなど、すべてを搭載し動作確認もできた。

機体の大きさは直径約30cm程度の球体で、素材は発泡スチロールだ。万が一海に落ちても浮く。

この風船ロケットを製作したヘンタイの部屋は、ある意味カオスと化した宇宙状態になっていた。まぁ、おそらくよくある状態なのだろう。なにせ彼は、ヘンタイである。

その数日後、ヘンタイは打ち上げのため集合場所である東京に新幹線で移動した。風船ロケットを風呂敷に包んで運んでいる様子は、ちょっと大きめの遺骨を運んでいるような姿であった。

宇宙のもくずにならないことを望む。

 

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